英語会議をスムーズに進行させるコツ
ファシリテーションスキルの向上を目指す
「日本語ではできた会議の進行が、英語だとハードルが一気に高くなる」と感じている方もいるのではないでしょうか。
これは単なる言語だけの問題ではなく、日本と海外では会議の進め方が異なることも要因です。当記事では、英語会議のファシリテーション力を向上させる方法やフレーズを紹介します。
はじめに
「適切な言葉を探しているうちに話が先に進んでしまい、議題からズレていても戻せない」「言語の壁により相手のペースに巻き込まれ、対等に会議を進められない」
英語会議でファシリテーションを任されたことがある方なら、このような経験をお持ちではないでしょうか。
母国語である日本語の会議でさえ、円滑に進めるのは難しいもの。意見の対立や時間配分など、進行を妨げる要因は少なくありません。これが英語となれば、言語の壁や文化の違いという新たな障壁が加わります。
当記事では、英語会議をスムーズに進めるための具体的なコツをはじめ、実践で役立つフレーズをご紹介していきます。
「英語会議でファシリテーションを任されて困っている」「もっとスムーズに英語会議を進行できるようになりたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
英語会議におけるファシリテーションとは
会議はビジネスにおいて重要な意思決定の場です。英語で効果的なファシリテーションができれば短時間で効率的に議論を進められるようになり、生産性の向上も期待できます。
日本の会議は議長が中心となり、予め決められた議題を順にこなしていく形式が一般的です。一方、英語会議では参加型で双方向的なスタイルが多く採用されます。
多様な視点から意見を出し合えれば、革新的なアイデアが創出されるでしょう。意見交換を活発に行い、参加者間の相互理解を深められれば、チームの結束力を高めることも可能です。
英語会議のファシリテーションの目的は、「参加者全員の能力を最大限に発揮させること」「創造的な議論を通じてより良い成果を上げること」にあります。
全員が発言できるよう積極的に質問を投げかけるなど、議論を活性化させるためには「オープンな雰囲気作り」が大切です。会議の状況は常に変化するため、臨機応変に対応できる柔軟性も求められます。
英語会議をスムーズに進行させる4つのコツ
「参加者へ意見を求める方法」や「脱線した議論を本題に戻す方法」など、会議の場面ごとに役立つフレーズをご紹介します。
1. 会議の導入
①はじめの挨拶
最初の挨拶は、会議全体のトーンを決定づける重要な要素です。堂々とした姿勢で「自分が会議をコントロールしている」という印象を与えるよう心がけ、参加者全員が安心して発言できる環境を作りましょう。
It's a pleasure to meet you all today. I’m thrilled to be a part of this group.
今日は皆さんにお会いできて光栄です。このグループでご一緒できて大変嬉しいです。
I’m Takeshi Nakano, and I’m happy to join you today. I’ll be facilitating this meeting.
本日ご一緒させていただきます中野たけしです。私がこの会議の進行役を務めます。
②グランドルールの提示
会議の進行を円滑にするために、事前に決めておいたグランドルールを共有することも大切です。発言の順番など基本的なルールを明確にすることで、議論が脱線したり意見が対立するのを防ぎます。
Let’s take a look at the ground rules. I’ll just go over the most important ones.
基本ルールを見てみよう。最も重要なものだけを説明します。
One person speaks at a time.
一人ずつ発言する。
Keep comments brief and to the point.
発言は簡潔に要点を絞って行う。
③アジェンダの紹介
事前に作成したアジェンダを提示し、本日の議論の流れを共有します。アジェンダの説明後は、参加者からの質問を受け付ける時間を設けてみるのも良いでしょう。疑問点を解消することで、以降の議論がスムーズに進みます。
Let's follow the agenda closely.Now, let me go over today’s agenda. There are 5 items.
アジェンダ通りに進めましょう。では、今日の議題を説明します。5つの項目があります。
If you don’t mind, I’d like to go in this order. Any comments from anyone? Alright, then. Why don’t we get down to business? Let’s start with the first item….
差し支えなければ、この順序で行きたいと思います。どなたかご意見は?では本題に入りましょうか。最初の項目から始めましょう...
2. 議論の促進
①アイスブレイク
議論を促進するために、最初に簡単なアイスブレイクを行うのもひとつの手です。日本の会議ではアイスブレイクは必ずしも一般的ではありません。
それに対し英語会議においては、緊張を解きほぐし、円滑なコミュニケーションを始めるための重要なステップとされています。
Let's start with an icebreaker: share a memorable experience from your life using the phrase 'my first' as a prompt. For example, 'my first job,' 'my first day at school' and so on.
アイスブレイクから始めましょう:「私の初めて」というフレーズを使って、あなたの人生の中で忘れられない経験を共有してください。例えば、「私の初めての仕事」「私の初めての学校の日」などです。
②参加者全員の意見を求める
会議でより良い結果が生まれるのは、参加者全員の積極的な発言があってこそ。それぞれの意見が、最終的な結論に大きく影響を与えることを理解してもらうことで、責任感を持って会議に臨んでもらえます。
英語の世界では、投げかけられた質問に対して丁寧に真剣に対応するというルールがあります。実際に会議が始まったら、参加者に対して満遍なく質問を振ってみてください。
Let's do Round Robin. We'll go clockwise from whoever speaks first.
一人ずつ順に行きましょうか、最初に発言した人から時計回りに回ってください。
What are your thoughts on this?
これについてどう思いますか?
3. 会議のコントロール
①各議題の割り当て時間を決め、時間内に議論を終える
外国人の参加者の中には、自分が発言するチャンスを今か今かと狙っている人もいます。英語会議では、発言内容の質よりも「発言している」という事実が評価されるからです。
発言時間をあらかじめ決めておくことで議論が脱線するのを防ぎ、全員が公平に意見を述べられる機会も確保できます。
We only have 10 minutes left for this topic, so let's try to reach a conclusion.
このトピックに残された時間は10分しかありませんので、結論を出すようにしましょう。
Please make your comment shorter than one minute.
コメントは1分以内でお願いします。
②議論が脱線したら早めに戻す
会議のコントロールはファシリテーターの腕の見せ所です。一般的に日本人は相手の意見を尊重し、否定的な発言を避ける傾向があります。そのため、議論が脱線してもそれを指摘しにくいという状況が生まれてしまうのです。
英語会議では行き違いや勘違いは当たり前、そしてそれを正すのも当たり前とされています。以下のフレーズを参考に、脱線した議論は早めに軌道修正するようにしましょう。
I think we’re getting a bit off topic. Let’s try to stay on topic.
少し話が逸れているようですね。本題からはずれないようにしましょう。
I can see that this topic is generating a lot of interest. Why don't we arrange a separate session?
このトピックが多くの関心を呼んでいるのはわかります。別の機会を設けてはどうでしょうか?
4. 結論の導出
日本の会議は事前にある程度の結論や方向性が定まっている場合が多く、参加者はその範囲内で議論を進めがちです。一方、英語会議では自分のアイデアを積極的に提案することが良しとされるため、議論が活発になり、時には意見の衝突が起こることもあります。
そういった白熱した会議の末に、ファシリテーターは参加者全員が納得できる結論を導き出さなければなりません。以下のフレーズを参考に、議論の終盤でぜひ活用してみてください。
Before we conclude this meeting, why don’t we summarize the main points we discussed? Let me recap what we’ve agreed on today.
閉会する前に、会議で話し合った主な点をまとめましょうか。今日の合意事項を振り返ってみます。
Are we all clear what we need to do before the next meeting? Let’s just run through who’s doing what.
次の会議までに何をしなければならないかは全員明確ですか? 誰が何をするのか、一通り確認しましょう。
ファシリテーターとして自信を持つために実践してほしいこと
ファシリテーターは言語力だけでなく、臨機応変に対応できるスキルを求められます。会議で使えるフレーズを身につける以外に、事前練習も一緒に実践してみてください。
1. 実践をイメージしながら、声に出して練習する
英語会議に慣れるには事前に声に出して練習することが効果的です。本番さながら、堂々と意見を述べる練習を繰り返すことで自信がつき、ビジネスの相手にプロフェッショナルな印象も与えられます。
英語会議では、それぞれの参加者が呼ばれた明確な理由があります。その理由を推測し、想定問答を作っておきましょう。参加者から飛んでくるであろう質問や意見を予想し、リストにして回答を準備しておけばベストです。
英語が第二言語の人が参加する会議であれば、動画などで最低15分程度、その国出身の人が話す英語に慣れておくのもお勧めです。
日本語環境で仕事をしている人も、会議直前に軽くリハーサルをしておくと良いでしょう。声に出せない場合はぜひサイレントでやってみてください。頭の中が英語モードに切り替わり、萎縮せず本番を迎えられます。
2. ロジカルに話す訓練
「議論が深まらず、話が抽象的なレベルに留まってしまう」「相手の話をその場で上手くまとめられず、結論に導けない」という方にお勧めなのが、ロジカルに話す訓練です。
日本の教育では自分の意見を根拠に基づいて説明したり、相手の意見を論理的に反駁するトレーニングを積む機会が少なく、日本語であってもロジカルに話すことに慣れていません。
グローバルなビジネスシーンでは、英語力だけでなく、論理的な思考力に基づいたコミュニケーション能力が重視されます。英語の語彙力や流暢さに縛られず、まずは日本語でロジカルに話を組み立てられるように練習してみてください。
そうすれば、英語で意見を述べる際も「何をどう伝えるか」という本質的な部分にフォーカスできるようになります。
まとめ
ファシリテーションのゴールは、完璧な英語で話すことではありません。議論を深めるための質問を投げかけ、意見の相違を恐れず積極的に参加者を巻き込み、次のアクションプランに結びつけることが重要です。
「英語力に自信がないのに、英語会議の進行をいきなり任されてしまった」「ファシリテーターとして自信を持ちたい」という方は、当記事を参考に英語会議をスムーズに進行させるコツを身につけ、一歩ずつスキルアップを目指していってください。
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監修:松尾 光治
元大手英会話スクールの教務主任、教材開発。在米35年、現在もニューヨーク在住。早稲田大学第一文学部中退、英検1級、TOEIC985点。英会話の講師とニューヨークでの日系商社での勤務経験から、日本人ビジネスパーソンを対象にした実用的な英語教材を開発。
パタプラ
会議&ファシリテーションで
会議の質を高め、
議論に貢献できる人材に