ChatGPTの活用ガイド
急激に進化し続けるChatGPTをはじめとした生成AIは英語学習の強力なツールとなります。
この記事でお伝えする基本を出発点とし、ChatGPTの進化に伴って登場する新しい機能も試しながら自分に最もあった使い方を編み出していってください。
【1】ChatGPTを使いこなすには
英語習得のツールとしてChatGPTを使う際の基本知識、必ず活用したい機能、プロンプトの基本の3点について説明します。
前提となる基本知識
・ChatGPTで会話をするにはアプリの音声版が便利です。パソコンならChatGPTの画面右下のアイコンをタップして、アドバンスドボイスモードの画面を開きます。

・会話内容は全てテキストとして残っているので、後から文字で確認できます。
・ChatGPTに与えるプロンプト(指示や質問)は日本語でも可能。文法ミスに関する説明や表現のニュアンスの違いの説明も日本語で説明してくれるので便利です。自分が発話中に表現や語彙に詰まった時に「●●は英語でなんと言いますか?」と質問すれば、その場で答えが返ってきます。
・ここで紹介するプロンプトは汎用的なものです。指示内容や指示を与えるタイミングを常に工夫することを忘れないでください。生成AIは進化続けているので、自分が欲しいものを得るのに、より適切なプロンプトは試行錯誤して見つけるのがベストです。
・自分の発音をChatGPTが正しく認識しないことがしばしばある場合は、発音専用アプリのElsa Speakでの発音矯正をおすすめします。「発音を改善する(Improve Pronunciation)」のメニューがおすすめです。毎日10分から練習でき、数ヶ月もすれば明らかな違いが出てきます。
必ず活用したいポイント① 添削と提案
自分の使った英文の文法上のミスを指摘して説明させたり、より自然な表現を教えてもらえます。
指示の例
「今日の会話の全てを通して、私が犯した文法上のミスや、より自然な英語に改善できる点を教えてください。」
指摘されるポイントが少ないと感じたら、
指示の例
「最低10ヵ所指摘してください。」
などと追加。
自分の英文のどこに改善点があるのかが分かりますが、ChatGPTの模範解答を暗記する必要はありません。
意味が通じているとChatGPTが判断している限り、ミスのない完璧な英語を目指して模範解答の暗記に時間を費やすよりも、適切な受け答えや、明確な議論の進め方といったコミュニケーションの他の要素の強化に注力するなど、自分の取り組みの方向に確信を持って進めることもできます。
必ず活用したいポイント② 英文のレベルを指定
会話やテキストでChatGPTの使う文章が難しすぎると感じる場合、英文の難易度のレベルを調整できます。(ChatGPTのデフォルトの文章レベルはビジネス向けの会話や文章の場合CEFRのレベルでB2と考えられます。)
指示の例
CEFRのレベルで指定する場合
「CEFRのB1レベルの英語を使ってください。」
次のようなプロンプトも試してみましょう。
指示の例
「会話調(conversational)の英文にしてください」
「口語調(colloquial)の英語にしてください」
「Plain Englishにしてください」
「くだけた口調にしてください」
プロンプトの出し方では3つの基本を意識する
次の3つの基本をおさえると望んだ結果に近いものが生成されやすくなります。
基本1:プロンプト(=指示や質問)は、なるべく具体的に与える。
「短く書いてください。」ではなく「70語以内で書いてください。」とします。
指示の例
「70語以内で書いてください。」
基本2:大きなプロンプトから始めて段階的に追加する。
ある英文雑誌の記事の要約が欲しい場合の最初のプロンプトの例です。
指示の例
「70語以内でこの記事を要約してください。」
「CEFRのB1レベルの英語で書いてください。」
「会話形式で短い文で書いてください。」
「キーワードの名詞はCEFRのB1レベルにせずに元の記事の名詞をそのまま使ってください」
最初から要件が決まっているならば、最初のプロンプトでまとめて与えることもできます。
指示の例
「70語以内でこの記事を要約してください。CEFRのB1レベルの文で、短い文を使った会話形式にしてください。キーワードの名詞はCEFRのB1レベルにせずに元の記事の名詞をそのまま使ってください」
基本3:ペルソナ(特定の立場)を設定する。
必須ではありませんが、ChatGPTに演じさせるペルソナを設定したほうが、ペルソナに沿った、より的確な答えが返ってくることが多いです。
指示の例
「あなたはマーケティング会社の幹部として、やや具体的でない曖昧な回答をする傾向のある人物を演じてください。」
ChatGPTを使いこなすコツは自分で使い方を工夫していくことです。
英語系YouTubeやネット上の記事などでも常に新しい使い方の情報が入手できます。実際に試しながらその時点の自分にとってベストの方法を見つけていってください。
この記事では「正しい使い方」を細かく説明するのではなく、ChatGPTでできることの典型的な例と代表的活用例のみをお伝えします。
次項の「ロールプレイ:特定の状況(初対面の雑談、面接、ネゴシエーションなど)での会話練習」のみ、やや詳しく説明しておきますので参考にしてください。
【2】会話の練習に使う
ロールプレイ:特定の状況(初対面の雑談、面接、ネゴシエーションなど)での会話練習
自分が遭遇しそうな状況に絞って会話練習を積んでおくことで、本番でも余裕をもって話せます。
また、「理解しにくい部分を上手に聞き直す練習をしたい」とか、「曖昧な回答をする相手から詳細を聞き出す練習をしたい」といった自分の学習目標に合わせてカスタマイズもできます。
例)初対面の雑談の会話練習をしたい時のプロンプト
指示の例
「ネットワーキングイベントでの英語のスモールトーク練習をしたいです。ビジネスカンファレンスで私と初めて会った人の役を演じてください。あなたはマーケティング会社の幹部です。自然な会話の流れで約7〜10回のやり取りを行ってください。」
自分の学習目標に合わせてさらに注文をつけたければ、次のようなプロンプトを後から与えることもできます。
指示の例
「あなたはマーケティング会社の幹部として、曖昧な回答をすることがあります。私が詳細を聞き出したり、確認したりする練習ができるよう、時々意図的に漠然とした表現や不明確な言い回しを使ってください。」
その他にも次のようなプロンプトが可能です。自分で思いつかなければこれもChatGPTに質問してください。
指示の例
「私が新しいプロジェクトのパートナーを探しているという設定で会話してください。私がさりげなく自分の強みをアピールする機会を作ってください。」
指示の例
「国際的なビジネスフォーラムで出会ったインド人のビジネスパーソンとして振る舞ってください。文化的な違いについて触れることも含めてください。」
指示の例
「3〜4回のやりとりの後、私が自然に会話を終わらせ、連絡先を交換するなどの次のステップに進む練習ができるようにしてください。私の会話の終わらせ方が唐突または不自然だった場合は、より洗練された言い方を提案してください。」
即興スピーキング: 与えられたトピックについて準備なしで話す練習
カジュアルなトピックから社会問題、国際情勢、さらに各種の英語スピーキングテスト頻出のトピックなどをリストアップさせて即興で話す練習をします。
特にビジネス上のコミュニケーションというのは、自分の意見や考えを述べることの繰り返しなので、この即興スピーキングで筋道立てて話す訓練が非常に役立ちます。
活用例:
・結論ファースト(結論-理由-例-結論)で話す練習をする。スピーキングテスト対策としても有効。
・言葉がなかなか出ない場合は、まずは30秒から始め次第に時間を伸ばし1分間、2分間、3分間の枠組みで筋道を立てて話せるようにする。
・同じトピックに何度も挑戦して改善する。
議論のトレーニング:特定のトピックについて議論する - ChatGPTに反論や意見を述べさせることで、議論への耐性を作る
上の即興スピーキングと同様ですが、ChatGPTに議論の相手をさせます。
活用例:
・結論ファースト(結論-理由-例-結論)で短く意見を述べる練習をする。
・ChatGPTに常に反対意見を言わせる。「常に反対意見を述べる役を演じてください」などと指示。「悪魔の代弁者(Devil’s advocate)になってください。」と指示するとディベートのように極めて論理的に反論してくる相手役になる。
瞬間英作文
※「瞬間英作文の活用ガイド」もご参照ください
なるべく絞った分野や状況の表現を集中して覚えることで、パターンプラクティスだけではカバーできない自分に必要な表現を多数覚えることができます。
学んだ表現に関して、パタプラと同様に定期的な復習と応用練習を行うことは必須です。瞬間英作文を行う市販アプリもありますが、ChatGPTで手軽に無料で自分用にカスタマイズした練習ができます。
プロンプトに以下の点を含めることで目的に沿った練習ができます。
・瞬間英作文を行いたいこと
・間違っていたら訂正が必要なこと
・他の言い回しも教えてほしいこと
・解説は日本語でもらいたいこと
・トレーニングしたい回数
・問題文は●●でよく使われる語彙やフレーズから作成してください
・学習者の属性
指示の例
「私と瞬間英作文をしてください。私の英語が自然でない場合は修正してください。英語表現として、より適切な言い回しがあれば提案してください。解説は日本語でください。質問と回答を1問ずつ進める形式で、計10回行いたいです。問題文の半分は自動車の製造と組み立てでよく使われる語彙やフレーズから作成してください。
私の属性は以下のとおりです。
・40代男性、妻と住んでいる
・会社員
・ベトナムに駐在で来ている
・趣味は音楽、旅行、料理」
英文要約練習:長めの文章や短いストーリーを聞いて自分で要約し、ChatGPTの要約と比較する
相手の話のポイントを正確に把握しそれを自分の言葉で短く再現する訓練は、コミュニケーション全般に役立ちます。スピーキングテスト対策としても使えます。
活用例:
・語数とトピック、スピーキングテストの種類等を指定して練習
・CEFRのレベルで文の難易度・フォーマル度を調整させる
・同じトピックに何度も挑戦して改善する
Versantのストーリーリテリングの練習をしたい場合:
指示の例
「Versantのストーリーリテリングの練習をしたいです。英語で80語程度の問題文を出してください。問題文を聞いたあと、私が40秒程度で要約をします。要約し終わったら「以上です」と日本語で言いますので、要約についてフィードバックをください。」
フィードバック後、さらに細かいフィードバックが欲しければ、以下のようなプロンプトを入力します。
指示の例
「文法上のミスの指摘や、より自然な表現の提案はもっとありますか? 」
指示の例
「CEFRレベルを判定してください。またその理由も教えてください。」
TOEICスピーキングテストの意見を述べる問題を練習したい場合:
指示の例
「TOEICスピーキングテストの意見を述べる問題を練習したいです。問題文のトピックを3つ出してください。私は一つのトピックを選び、自分の意見と理由を1分程度で述べます。話し終わったら「以上です」と日本語で言いますので、フィードバックをください。」
フィードバック後、さらに細かいフィードバックが欲しければ、以下のようなプロンプトを入力します。
指示の例
「文法上のミスの指摘や、より自然な表現の提案はもっとありますか? 」
指示の例
「CEFRレベルを判定してください。またその理由も教えてください。」
【3】テキストベースで使う
英文添削
自分の書いた英文の添削、間違いや改善の余地のある箇所を指摘させます。
活用例:
・単に答えを得るだけでなく、なぜその表現が適切なのか説明を求める
・同じ意味でより適切な表現や類義語を提案してもらう
・文法チェック: 苦手な文法項目について例文や問題を作らせる
以下のようなプロンプトを適宜混ぜて指示します。
指示の例
「次の文を添削してください。」
「修正した理由を日本語で説明してください。」
「この文章は自然ですか?改善する部分があれば修正し、その理由を日本語で説明してください。」
「この文章をよりフォーマルな表現に直してください。」
「この文章のCEFRレベルを判定してください。またその理由も教えてください。」
「この文章をCEFRの[B1/B2/C1]レベルで書き直してください。」
自分の興味に沿った多読用素材の作成
自分の趣味の分野や、「知りたい!」と感じる内容の文章を多く読み英語をインプットすることは、アウトプット力に直結します。
好きなトピックであれば分からない部分があっても途中で止めませんし、未知の語彙があったとしても、知りたい気持ちが強いのでその場で調べることも苦になりません。興味があるので、新しい表現も語彙も定着しやすくなります。
一方、そのような読みたい文章がレベル的にまだ手が届かないというジレンマを多くの人がこれまでは抱えていました。
ChatGPTがこれを解決してくれます。英文の難易度のレベルをChatGPTで調整できるようになったからです。
上記の「必ず活用したいポイント②英文のレベルを指定」を参考にして、自分でストレスなく読めるレベルの文章に変換してみましょう。
活用例:
・とにかく楽しみながらたくさん読むことで、大量の英語をインプットする
・直読直解の訓練用に使う
・語彙やチャンクを抽出して例文を作らせて覚える
・抽出させたチャンクで自分の文を作り、添削させる
・日本語訳を作らせ、全ての文を瞬間英作文用に使う
記事自体をChatGPTに作らせる場合:
指示の例
メルボルンのカフェ巡りに興味があります。メルボルンのカフェについて楽しい記事を英語で200語程度で書いてください。
・口語調の語彙を使って書き直してください。
・(生成されたものに対して適宜指示を追加)
「口語調の語彙を使って書き直してください。」
「フォーマルな語彙や文体で書き直してください。」
既存の記事をChatGPTに読みやすく書き直させる場合:
指示の例
「次の英文をCEFR [B1/B2]レベルの英語に書き直してください。
(記事の内容をコピー&ペースト)」
定型表現や単語・チャンク集の作成
※「ChatGPTを使ったチャンク収集ガイド」もご参照ください
特定の分野や状況に関連した表現やチャンクを生成させることで、目的にフォーカスした学習ができます。